akamiskyのブログ

1日ひとつ、なんか書くカンジ。

はじめのほうの記憶

思い出せる範囲での、最も古い記憶…
ベッドを囲む柵で長方形に切り取られた天井。
そこに浮かぶプラスチックの花や星。

午後の光が明るい部屋で目が覚めた。
火照ったからだの熱でぼんやりした意識が、次第に冷めていって気づいた。

「あのひとがいない」

涙が出てきて、なんとなく寂しかったような気がする。
きっと声をあげて泣いていたんだと思う。
でもどんなふうだったか思い出せない。
そんな記憶。

生まれてからしばらくは集合住宅で育てられた。
近くに住んでいた子供で印象的な女の子がいる。

親指を立てて「めーっ!」と言うと、泣き出す。
あの子の父親か母親が怒るとき、そうしていたんだろうか…

他人を思いやることが分からず、面白がって「めーっ!」をやって、その子をよく泣かせていたような気がする。

集合住宅での記憶がもうひとつある。
刃物で切り裂かれた自転車のサドル。

あの頃、近所に心を病んだ中年女性がいたらしい。
夜になると包丁を持って、うろうろする。

本物を目にすることがなく、話を聞いても現実味がなかった。
絵本に出てくる意地悪な魔女。
別の世界の存在で、こっちには出てこないと思っていた。

ある日、母の自転車のサドルが「X」の形に切り裂かれた。
「あたまがへんなおばちゃん」は、やっぱり近くにいるらしい…
怖いとか危険だとか判断できなくて、漠然とそんなふうに感じていたように思う。

結局、実物を目にすることはなかった。
彼女の存在は、今でも輪郭が少しぼやけているような気がする。