入院したときのこと
白い部屋でぼんやりと目が覚めていることに気がついた。
だるくて寒い。
冬でもないのに電気毛布を使う。
夜になって麻酔が切れると、ヘソの右下にある縫い目が痛みだす。
薬をいれてもらうとなんとか眠れた。
初めての食事は薄い重湯だったけど、身体にいれると痛かった。
痛みがくると分かっていて食べるのは気が進まなかった。
3日ほど何もせず消化にいい食事が続くとうんざりする。
同じ痛いなら食べて楽しいものがいい。
そんな風に思い出したころ退院が決まる。
通常より入院日数は短いけど、若いから大丈夫らしい。
退院したら食べたいものがいっぱいあった。
回復するにつれ食べられる喜びを噛みしめた。
そう記憶しているのだけど、退院後に何を食べたのか覚えていない。
それよりも病院で食べたものの方がよく覚えている。
薄い味付けで、細かく刻まれた鶏肉や野菜。
重湯から少しずつお粥に変わるごはん。
当たり前のように繰り返してることは薄れてしまう。
非日常は繰り返し思い出されることで残った。
病院の味気ない食事はいい思い出かもしれない。
食べられることの喜びをまた思い出すことができるから。