風邪でおとなしく寝ているのも4日目。 毎度治るのに時間がかかってうんざりする。マリア様が見てるを何気なく観てると、温室で育つ花を愛でているような気分になる。 現実に有りうるかどうかはともかく、こんな世界でいちど暮らしてみたいとは思う。欲望や戦…
小学生のある時期、近所の探検をよくした。 どこに続くのか分からない用水路を進んだり、家の塀に掴まって落ちずにどこまで移動できるか… そんなことが当時は探検だった。 小さい頃からボールを使ったり、大勢で遊ぶことがそれほどなかった。 家の中で遊ぶこ…
白い部屋でぼんやりと目が覚めていることに気がついた。 だるくて寒い。 冬でもないのに電気毛布を使う。 夜になって麻酔が切れると、ヘソの右下にある縫い目が痛みだす。 薬をいれてもらうとなんとか眠れた。 初めての食事は薄い重湯だったけど、身体にいれ…
気持ちわるくなって列車を降りた。 帰りの車内は混んでいて座ることができない。 人が吐き出す息と、肉の熱で熱気がこもっている。 そんな気がして不快感が増した。 乗り物酔いや二日酔いじゃない。 降りた駅のホームで座り込んでしまった。 不快感は消えず…
春休み、夜に眠れなくなった。 合格通知は届いていた。 新しい環境に不安はなかったと思う。 夜中、なにかに熱中していたわけでもない。 灯りを消して、目を閉じても眠れない。 寝なければいけない。 思うほど気持ちが刺々しくなる。 あたまの奥は鈍くて重い…
幼稚園に入る時期、父方の実家で祖父母と同居することになった。 祖父母、父母、弟、叔父の7人。 赤く錆びた門扉、集合写真みたいに並んだ盆栽、和室の壁に掛かっていた般若面。 家は古いにおいがして薄暗く、湿気が多かった。 梅雨の朝方は洗面所へいくと…
思い出せる範囲での、最も古い記憶…ベッドを囲む柵で長方形に切り取られた天井。そこに浮かぶプラスチックの花や星。 午後の光が明るい部屋で目が覚めた。火照ったからだの熱でぼんやりした意識が、次第に冷めていって気づいた。 「あのひとがいない」 涙が…